今回の通信no.4は、
2007年8月から2008年2月の終わりまでの取材スケッチです。
1.オープニング
六ヶ所再処理工場や核燃サイクル計画をめぐって、映画の公開からこの方起きてきた様々な出来事を、
新聞記事をもとに振り返ります。映画公開の直後、再処理工場は最終試験段階にはいりました。
2.WAVEMENT
2007年8月、再処理工場の事を知ったサーファーたちが六ヶ所をめざす旅に出ます。鎌倉から六ヶ所に
至る太平洋沿岸で地元のサニファーたちと交流し、地元の普通の人々とも対話をしてゆきます。プロサ
ーファーの中村竜さんやミュージシャンのユカリシャスさんは現実に触れながら自分たちのスタンスを
模索していきます。旅の最後に岩手県重茂の漁協に立ち寄り、重茂の漁民たちと全国的な署名活動をい
っしょに展開する計画が提案されます。
3.上映会 in 千葉
8月、千葉市で25歳の青年、山本さんが呼びかけた「六ヶ所村ラプソディー」の上映会が開催されまし
た。六ヶ所にも実際出かけて行った山本さんは観客に自分が体験した六ヶ所を伝えます。映画の質疑で
観客の1人が「あまり詳しく知らない山本さんがこうやって知らせようと動いた、そこが素晴らしい」
と感想を伝えます。山本さんは再処理に反対するのではなく、反対すべきは自分のライフスタイルだと
語ります。
4.花とハーブの里−訪問客
菊川慶子さんが14年前から始めたチューリップ祭りは六ヶ所村の風物詩になっています。菊川さんは、
核燃に反対しつづけてきましたが、一方で核燃計画は着々と進んできました。映画の公開後、増え続け
る訪問客の対応に追われる菊川さんに、この日、立命館大学の学生が直裁な質問を投げかけます。誰の
ために運動をしているのか?−と。
5.苫米地さんの苦悩
十和田市で無農薬・有機でお米を、13年間作ってきた苫米地ヤス子さんは、この年、肥料も使わないで
お米を作ってみました。収量が落ちてしまったのは前にも増して雑草が生い茂ったからです。隣の田ん
ぼの農家は除草剤が楽だから田んぼにも入らなくなったと言います。放射能の事は理解されにくい、と
苫米地さんは稲刈りをしながら来年もお米を作り続けるか悩んでいます。
6.臨界事故:避難訓練
初めて、国が主催する避難訓練が、10月24日に行われました。再処理工場で臨界事故と火災が起きたと
いう想定です。経済産業省副大臣もヘリコプターでかけつけ、首相官邸とも、テレビ電話でつながって
います。しかし、対策本部は工場の間近。住民もマスクもつけずに工場のすぐそばにある避難所へとや
ってきます。自衛隊の特別部隊は防毒マスクを持ってやってきました。東海村から来た内部被曝検査技
師は、被曝量を正確に計るのは不可能といいます。一方、工場の真下にある尾鮫沼では微量とはいえ、
放射性トリチウムの濃度が上がってきました。
7.あしたの森の若者たち
花とハーブの里から車で5分、伐採された山林に植樹をしようと若者たちが歌を口ずさみながら集まっ
てきました。07年春分の日に、島根原発を起点に夏至までの3ケ月間、六ヶ所まで植樹をしながら歩い
たWALK9のメンバーたちです。これを主導した正木高志さんは、ここに木を植えることで人間たちが自
然から学ぶことができる−と語ります。カナダからセヴァン・スズキさんもやってきました。若者たち
の明るい声が響き渡ります。
8.署名提出
11月5日、岩手県重茂や「三陸の海を放射能汚染から守る岩手の会」、そしてサーファーたちが9万人
以上の署名を集めて経済産業省に届けに来ました。これらの訴えにエネルギー庁の担当官は、「希釈・
拡散を前提に社会は成り立っている」と工場を支持する姿勢を崩しません。参議院議員の川田龍平さん
は法律を変えなければいけない、と語ります。
9.苫米地さん、川口さんを尋ねる
苫米地さんはこの日、奈良県に住む自然農を実践する川口由一さんを訪ねました。このまま放射能汚染
を受けるお米を作り、子供たちに食べさせてもいいのか、と悩んだ末でした。川口さんはそんな苫米地
さんを柔らかく受け止め、29年間耕さず、農薬も肥料もー切使っていない田んぼに案内します。そこに
は豊かに稲が実り、草が生い茂っていました・・・
10.NO NUKES MORE HEARTS
11月18日、東京日比谷野音で再処埋に反対する若者達が自分たちの問題としてこのことを伝えたいと大
きな集会を開きます。これまで反対運動を続けてきた人々に加えて様々な年代、様々な職業の普通の市
民が会場を埋め、ミュージシャンSUGIZOさんらのメッセージに耳を傾けました。
11.六ヶ所村で生きる
一方、再処理工場は本格稼働に向けて着々と試験を続けています。工場内での点検要員の募集があり、
雇用問題も解決されました。岡山建設の岡山勝庫会長は、推進派も発信しなければ、と語ります。とま
りクリーニングの小笠原聡さんは、仕事があることの大切さを語りながら、反対派のおかげでバランス
がとれているのだ、対話もできると言います。
12.市民の声
八戸に住む山内雅一さんは青森県庁へこの2年間陳情や申し入れを続けてきました。この日は全量放出
されるクリプトンの除去装置をつけてくれるように申し入れにやってきました。青森県の職員は、大量
に出ても拡散して人間への影響は0・022ミリシーベルトとなるので問題はないという見解をこれまで同
様繰り返します。その数字が持つ矛盾を山内さんたちは鋭くついていきます。やがて職員たちは・・・
2008年4月22日 鎌仲 ひとみ
写真提供:グループ現代