「公設民営」と「民設公営」
民営化は行革の柱だが逆転の発想で民設公営も第2の柱に
日本の行政改革の流れは、猫も杓子も民営化である。懸案の郵政の民営化も、
まずは日本郵政公社という形で、いまだ国営ながら民営化への志向を始めた。
たしかに、サービスの向上、コスト意識の徹底といった点でメリットは大きい。
ポストに投函できる小包なんて発想も、従来のままでは生まれ得なかっただろ
う。
施設整備においても「公設民営」という言葉をよく耳にする。文化施設・ス
ポーツ施設から保育所や果ては大学まで数多い。箱もの公共事業の反省から、
運営を民間に委託することは悪いことではない。ただ、これとは逆の「民設公
営」という例もある。実はこの方が却っておもしろい。
足立区の東和銀座商店街は、株式会社組織をつくり、遂には区の小中学校の
学校給食を請け負うまでになった有名な商店街だ。ここが、この春から商店街
の空き店舗を活用して学童保育事業を始めた。区は、この事業に2000万円近い
補助予算を組んでおり、区の立場からすれば民間委託ではある。しかし、民間
の施設を公的目的に転用し運営資金を補助している点では、「民設公営」とも
いえる。これにより、保育所の待機児童を減らせるとともに、商店街の活性化
にも寄与できる。
ほかにも、以前テレビで紹介されていたが、長野県の旅館が営業不振で廃業
し、自治体に老人ホームとして提供しているケースがあった。元経営者の夫婦
は、いまでは、ボランティアとして自分たちの元旅館で生き生きと働いている
そうだ。家賃で生活は保証され、実にうまい業態転換だと印象に残っている。
「公設民営」よりも「民設公営」というこうした「逆転の発想」にこそ、生活
やビジネスで新たなステージを切り開くヒントが隠されているような気がする。